薬剤部

医療安全を第一に 質の高い薬物療法の支援を

調剤部門

当院では、常勤薬剤師が9名勤務しており主に入院患者様、外来透析通院患者様の調剤を行っています。外来調剤は原則として院外処方箋が発行され保険調剤薬局で調剤が行われています。

安全で確実な調剤薬を提供するために当部門では調剤支援システムを導入しヒューマンエラーの防止に取り組んでいます。調剤支援システムの導入は、ヒューマンエラーを防止するだけではなく調剤業務を効率化することで、病棟での患者指導、薬剤情報提供の時間や、他の医療スタッフと協働し質の高いチーム医療の提供に資する時間の拡大に繋がっています。

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医薬品棚は、どのスタッフでも探しやすいよう五十音順に配置し、取違いを防止するため規格違いや名称の似ている薬剤の隣り合わせ配置を禁止し、規格違いの薬剤については注意喚起表示をするなど、調剤ミスを防ぐための安全対策を講じています。また、在庫切れを防止するためにほとんどすべての薬剤について定数管理とし、どの薬剤師でも同じクオリティで在庫管理ができるように配慮しています。

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内服の調剤は、患者様の管理のしやすさや飲み忘れ防止を支援するために、基本的にすべての患者様に対して一包化調剤を行っています。また一包化調剤は分包紙に患者様の氏名、薬剤名、識別コードを表示することで患者様への情報提供を行うとともに、視認性を高めることで病棟において看護師が薬剤を管理する際に確認がしやすく取り違いなどのヒューマンエラー対策としても機能しています。

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注射薬部門

入院注射薬調剤

当院では、患者別に注射薬取り揃え調剤を行い、患者名、薬剤名を記載した注射薬ラベルとともに病棟に運搬しています。注射ラベルには患者IDのバーコードが記載されており、医療安全対策として投与時には電子カルテ、患者リストバンドと注射ラベルのバーコードの3点認証を採用しています。運搬には病棟別注射薬カートを使用し、使用するとき以外は原則として施錠し安全面、衛生面にも配慮しています。

中心静脈栄養については無菌製剤処理料2を算定しており、当日の午後からの中心静脈栄養について、午前中に無菌室のクリーンベンチ内で無菌的に調剤を行い、衛生的な注射薬が患者様に投与されています。

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抗がん剤調剤

院内のすべてのがん化学療法は、安全性・有効性が認められているレジメンに基づいて実施されます。レジメンとはがん化学療法における抗がん薬、輸液、支持療法等を組み合わせた時系列的な治療計画を指します。レジメンは院内でがん化学療法に関わるすべての職種で共有されています。薬剤部では作成されたレジメンからの逸脱がないか、患者の体重、体表面積、投与量、休薬期間などを確認したうえで調剤を行っており、無菌製剤処理料1を算定しています。

抗がん剤の調製業務は、抗がん剤調剤室において安全キャビネット内で行っており、個人防護具(ガウン、手袋、マスク、キャップ、ゴーグル)の装着や、CTSD(閉鎖式接続器具)などを用いて調剤する薬剤師への抗がん剤暴露防止にも努めています。調製した抗がん剤は運搬するメッセンジャースタッフや病棟スタッフの暴露も考慮し専用のコンテナーに入れ運搬しています。

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患者指導、相談

薬剤部では、がん化学療法を受ける全患者様について、投与スケジュール、薬効や副作用とその対策等について説明、指導、相談を行っています。抗がん剤治療はときに辛さを伴う場合や、実施する期間が長期にわたる場合もあります。当院では患者様へ寄り添った指導を心掛け、時間を十分にとり信頼関係の構築に努めています。病棟では他の医療職と協働し安全ながん化学療法を提供できるようチーム医療の一員として業務にあたっています。

また、近年副作用対策の充実などにより、入院せずに外来でがん薬物療法を受ける患者様が増えています。当院では外来腫瘍化学療法診療料2を算定しており、外来患者様に対しても入院患者様同様、チーム医療の一員として患者様に寄り添った安全ながん化学療法を提供できるよう、副作用の聞き取りや薬物療法に関わる相談などに関わっています。

病棟業務

当院では、2013年4月より病棟薬剤業務実施加算を算定しており、各病棟に専任薬剤師を配置しています。患者様の入院時には持参薬の確認とカルテ入力を行い、医師の包括指示のもと持参薬を消化したあとの院内採用薬品への振り替え継続処方の代行を行っています。また入院時には患者様のアレルギー歴や禁忌薬、副作用歴の聴取を行い、安全な薬物治療の提供を心掛けています。

近年では高齢化に伴いポリファーマシーの問題が指摘されています。ポリファーマシーとは多剤服用により薬物有害事象のリスク増加や服用間違い、服薬忘れなどの問題につながる状態を指します。特に高齢者では生理機能の低下、複数の併存疾患を治療するために内服する薬剤数が増えることが多くなり、薬物相互作用などの薬物関連有害事象が生じやすい状態にあります。薬剤部では入院時の持参薬確認などを通じて、ご自宅できちんと内服できていたか、患者様の代謝機能(腎機能、肝機能)や体格(体重)、年齢などを確認し、適切な投与量であるかの確認や、医師の指示のもとの薬剤数の調整や代謝経路(腎臓、肝臓)に負担をかけない薬剤への変更提案など有効性・安全性などの様々な視点で患者様の薬物療法を支援しています。

また入院患者様に対しては、新規処方の際の服薬指導、副作用確認、内服できているかの確認や各種薬剤相談、定期的な薬剤情報提供を行い薬剤管理指導料1、2を算定しています。

薬品管理業務

医薬品は病気の治療・予防・診断に欠かすことができません。当院でも約800種類の医薬品を採用し、患者様の治療や検査に使用しています。医薬品の適切な保管環境や、使用期限の管理など、患者様に質の高い医療を提供できるように専任の薬剤師が医薬品管理を行っています。

また、近年では医薬品供給不安が大きな問題となっています。2021年から医療用医薬品の出荷調整が始まり、卸売業者に注文した医薬品が納品されない、あるいは注文数のうち一部のみしか納品されないという事例が増え、医薬品の安定供給が困難になっています。2024年になっても医薬品の出荷調整は継続されており、医療現場では医薬品の供給不安が続いています。供給不安はメーカーの製造管理、品質管理に起因する問題、新型コロナ感染症による影響や世界情勢の影響など複数の要因が複雑に絡まり大きな問題となっています。

現在ではそれらの供給不足に対しての対応が大きな課題となっています。当院では患者様の治療に遅延なく安定して薬剤を購入できるよう努めています。

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薬品情報管理業務(DI室)

医薬品情報の収集、管理、周知

当院では、DI室に専任薬剤師を配置し医薬品情報の収集、管理を行っています。専任薬剤師は日々更新される医薬品情報を常にアップデートする必要があります。医薬品情報は最も信頼できる独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)から入手しています。他にも医薬品安全対策情報(DSU)やPMDAホームページで検索できる医薬品リスク管理計画書(RMP)も非常に重要な情報です。また、定期的に医薬品メーカーの医薬品情報担当者(MR)と面談を行い、新しい情報の収集に努めています。

これらの日々更新される医薬品情報について当院では毎日のミーティングを利用して薬剤部全スタッフで共有しています。薬剤師以外にも共有が必要な情報については院内WEBを活用し病院全職員に医薬品情報を届けています。緊急性が高く直ちに周知する必要があると判断した場合は院内メールなどを用いて全医師に周知し、速やかに投与されている患者名検索を行い医師と連携のもと迅速に対応します。

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薬事審議会

当院では、医師、薬剤師、看護師、事務部で構成される薬事審議会を毎月開催しています。日々発売される新薬や新たに採用を検討する医薬品について審議会を開催し、公正な医薬品採用を行っています。また当院では、後発医薬品調剤体制加算2を算定しジェネリック医薬品の使用促進に取り組んでいます。

ジェネリック医薬品は、一般的に研究開発に要する費用が低く抑えられることから先発医薬品に比べて薬価が安くなっています。ジェネリック医薬品を普及させることは、患者負担の軽減や医療保険財政の改善につながるため、厚生労働省より2013年に「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」が策定されました。

当院でもロードマップに従いジェネリック医薬品の使用普及に努めていますが、数多くあるジェネリック医薬品から製品を選択する際に、DI室では「ジェネリック医薬品アセスメントシート」を使用し、医薬品の安全性、供給の安定性、情報提供体制、類似名称の有無、適応症や視認性を含めた薬剤デザイン等を数値化し比較したうえでジェネリック医薬品採用に一定の基準を設け、安全な医薬品採用に努めています。

当院担当MR(医薬品情報担当者)の皆さまへ

当院における情報提供活動につきまして、規定を定めておりますのでご確認の上、ご活動頂きますようお願い致します。

1.訪問方法

  1. アポイントがあることを原則とします。アポイントがない場合は、面会できません。
  2. アポイントは、メール若しくは電話にて、医師に直接連絡を行ってください。電話でアポイントをとる際は、外来診療に支障がないようご配慮ください。
  3. 緊急の連絡事項、重大な連絡事項がある場合は、17時00分までに医局秘書へご連絡ください。

2.訪問時間

  1. アポイントをとる際は、医師と時間調整を行ってください。
  2. 17時30分以降に訪問する際は、救急玄関横の守衛室において、所定の用紙に名前を記載し「入館証」を受け取った後、入館くださいますようお願い致します。

3.面会場所

  1. 医師が指定する場所で行ってください。
  2. アポイントがない場合は、医局および図書室への入室を原則禁止とします。

4.その他

  1. 患者様や職員に支障がないよう充分ご配慮ください。
  2. 医師あての資料などは、直接医師へ手渡してください。1階受付に置いていくことは原則禁止とします。

チーム医療

透析室業務

当院では外来透析患者様の処方に対して院内調剤を行っています。処方内容の確認や配薬、服薬指導を専任の薬剤師が行っており、透析患者様の血液データ変動などを担当医師へ報告しています。注射薬の変更提案などもサポートしており、透析患者様の適切な薬物療法の提供に努めています。

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褥瘡対策チーム

褥瘡とは"いわゆる床ずれ"のことであり、患者様のQOL(生活の質)を著しく低下させる要因となります。

当院では入院患者様を対象に褥瘡発生リスクの評価を行い、褥瘡発生予防に必要なケアを提供するとともに褥瘡の早期発見に努め、発生時は局所の処置および全身のアセスメントを行い多職種と協働し早期治癒できるように努めています。褥瘡対策委員会は医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、理学療法士により構成されており、毎週褥瘡回診を行っています。担当薬剤師は褥瘡処置に用いる薬剤の選択や剤型について提案しています。

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栄養サポートチーム(NST)

当院では、栄養サポートチーム加算を算定しており、短期を除く全入院患者様に対して、入院時に栄養スクリーニングシートを用いて患者様の栄養状態のスクリーニングを行っています。栄養状態が不良な患者様に対しては医師、管理栄養士、薬剤師、看護士、言語聴覚士からなるNSTが毎週回診およびカンファレンスを行っています。NSTは栄養管理モニタリングや再評価を行い、必要に応じて栄養プランを修正し栄養状態の改善を目指しています。担当薬剤師は栄養状態に応じた経静脈栄養(点滴)や経腸栄養のレシピを作成し医師に提案しています。

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糖尿病教室

当院では糖尿病透析予防指導管理料を算定し、患者様の糖尿病治療の継続を支援するために糖尿病教育入院や定期的な糖尿病教室を開催しています。糖尿病は、遺伝的なものに加え、生活習慣(食事、運動、ストレス、体重管理など)と関係があり、糖尿病が進行し心筋梗塞などの心血管系障害や慢性腎臓病、糖尿病性網膜症などの合併症を予防することが糖尿病治療において重要となります。糖尿病教室では医師、管理栄養士、薬剤師、理学療法士が順に講師を務め、薬剤師は糖尿病治療薬について患者様に分かりやすいような説明を行っています。また教育入院では入院期間を通じて患者様の服薬指導や薬剤相談にのっています。患者指導時には一律な指導ではなく、一人ひとりの個性や生活背景などを考慮し患者様との対話を重視しています。

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心不全カンファレンス

当院では2022年4月より医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、臨床工学技士、社会福祉士で構成される心不全チームを立ち上げました。心不全チームでは毎週心不全カンファレンスを行い、患者様に対して心不全進行抑制との再入院の減少を目標に薬物治療、食事、運動、生活習慣、教育、セルフケア、社会資源の活用や医療デバイスの導入など多角的なアプローチから多職種で検討を行っています。担当薬剤師は入院前に薬剤が内服できていたか、できていなければそれを妨げる要因は何か、適切な治療薬が十分に投与されているか、心不全に悪影響のある薬の内服はないか、退院後ご自宅で定期的な内服が維持できるような工夫などを考え、患者様に対して内服が滞ることのないように支援しています。

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慢性腎臓病透析予防診療チーム

当院では、慢性腎臓病の患者様に対して透析予防を目標として日本腎臓学会の「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン」に基づき、食塩制限や蛋白制限等の食事指導、運動指導、その他生活習慣に関する指導を行っています。慢性腎臓病透析予防診療チームは医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、理学療法士で構成され、外来診療において定期的に腎臓病教室を開催しています。

その他

委員会活動

医療安全管理対策委員会

医療安全管理対策委員会は診療部、看護部、薬剤部、医療技術部、事務部の各部門代表者と療安全管理者で構成されており、週一回のカンファレンスおよび医療安全ラウンド、月一回の院内各部門からの代表者を含めた医療安全推進委員会を開催しています。薬剤師は医薬品安全管理責任者も兼務しており、医薬品安全管理に関する職員研修や各部署に赴き部門研修を行っています。

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感染対策委員会

感染対策委員会は病院長、副院長、感染制御認定薬剤師、感染管理認定看護師、薬剤部長、看護部長、事務部長、看護部、医療技術部、事務部で構成され、院内における医療関連感染の予防および感染症発生時における適正な対策を行うことを目的とし、毎月感染対策委員会を行っています。認定薬剤師は委員会の実行組織として感染制御チーム(ICT)にも関わっており、週一回のICTラウンドや広域抗菌薬の使用状況の確認を行っています。また、患者様のバイタルサインや血液培養結果などから、適切な抗菌薬が適切な用量で投与されているかを確認し、必要に応じて抗菌薬の変更や用量変更などを医師に提案しています。

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薬学実務実習、早期臨床体験実習

当院は3名の認定実務実習指導薬剤師が在籍しており、薬学部実習生の受け入れを行っています。実習は常に「参加型」を目指しており、調剤業務のみならず、抗がん剤調剤、病棟業務や服薬指導体験、チーム医療や地域連携など、可能な限り多くの体験ができるよう支援しています。

血液管理業務

当院では、手術や貧血管理などで使用する輸血用血液製剤の管理も薬剤部で行っています。輸血用血液製剤の供給や保管、使用歴の長期保存など輸血用血液製剤や、その他の血液製剤の総合的な管理を行っています。

薬薬連携

当院では薬物治療の有効性と安全性の向上の観点から、保険薬局より担当医師への服薬情報提供書(トレーシングレポート)を受理しています。保険薬局において「担当医師へ情報提供した方が望ましい」と判断された情報を薬剤部で集約し、薬剤師から担当医師へその情報をフィードバックしています。

また近隣の保険薬局と定期的に面談を行い、入院と外来受診の薬物療法の"橋渡し"を行っています。入院患者様が退院する場合で保険薬局と情報共有をした方が望ましいと考えられる場合(大幅な処方変更や調剤上の工夫等)には、患者様の同意のもと薬剤管理サマリを作成し共有しています。病院薬局と保険薬局が連携すること(薬薬連携)により患者様への途切れのない薬物療法を支援しています。

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認定資格

  • 日病薬病院薬学認定薬剤師
  • 認定実務実習指導薬剤師
  • 感染制御認定薬剤師
  • 抗菌化学療法認定薬剤師
  • 心不全療養指導士
  • 腎臓病療養指導士
  • 循環器病予防療養指導士
  • スポーツファーマシスト