気胸センター
この度、当院は2019年3月から気胸センターを開設しました。気胸は突然発症が多いため、24時間365日対応の搬送先が求められます。そのような患者様の対応の際に、多くの医療機関の先生方にお気軽にご連絡いただける気胸センターにしていきたいと思っております。また、気胸が疑われる一般の患者様のご相談にも随時対応していきたいと思っております。※都合により時間外の対応が出来ない場合があります。
当院では若年者の比較的容易な気胸手術に対して単孔式胸腔鏡下肺ブラ切除術を施行しております。また、手術治療予定患者の中で可能である場合は術前の胸腔ドレーン留置をしない方法も採用して患者様の負担軽減に努めております。患者様の負担軽減と最小限の入院日数を実現する、より低侵襲な気胸治療を当院では追求していきたいと思っています。
気胸センター
- TEL:070-5079-8176(Dr.直通) 011-513-0111(病院代表)
- 担当:中島慎治 楠堂晋一
若年者の自然気胸
気胸の多くは痩身・長身の若年男子に好発する自然気胸で、日常診療で遭遇することの多い比較的ありふれた病気です。その原因はブラと呼ばれる気腫変化した肺組織が破綻し空気が漏れることが主な原因です。このような若年者の気胸に対しては、低侵襲で入院期間の短い治療が患者様の社会的損失を最小限にすると思われます。当院では入院期間の短縮、再発の防止を主眼とし胸腔鏡下手術を中心とした低侵襲治療を心がけております。また、術前の患者様の恐怖感と疼痛を最小限とするため、必要ない状況であれば術前ドレーン挿入を省略し、最短で手術治療を行うこともしばしばあります。患者様の状況に応じて、経過観察のみ、胸腔ドレーンでの保存的治療、最短での手術治療等の中で、適切かつ患者様のご希望に沿った治療を行いたいと思っております。
中高年の肺気腫による続発性気胸
40代以降の気胸は喫煙を原因とする肺気腫、高度気腫変化による続発性気胸であることが多く、肺癌等の悪性疾患を合併している場合などもあります。また、間質性肺炎等の肺気腫以外の肺疾患が原因の続発性気胸が増えてきます。さらに、動脈硬化性疾患による併存症に対して抗凝固剤、抗血小板剤等を内服している患者様も多数います。手術を中心とした治療がベストであっても安易に手術治療を選択するべきではない状況も多々あります。当院では、胸腔ドレーンを挿入後、可能であれば手術治療を積極的に施行する治療方針です。しかし、手術困難な症例には気管支鏡を用いた気管支充填術や胸腔造影下選択的フィブリン糊散布術、胸膜癒着療法等の治療選択をする場合もあります。そのようなハイリスク症例でも当院では関係各科と連携する体制を整えております。当院では循環器科・心臓血管外科・消化器内科・外科も活動しておりますので、併存症で入院中の患者様の気胸症例のご相談もお気軽に当センターまでご連絡頂ければ幸いです。
女性の気胸
女性の気胸は男性と同様にブラが原因の若年性の自然気胸もごく普通に見られますし、喫煙が原因の肺気腫による続発性気胸も中高年でみられます。しかし、稀に女性特有の気胸を発症する状況もあります。閉経前の女性であれば異所性子宮内膜症が原因の月経随伴性気胸や、肺移植の適応となる可能性のある肺リンパ脈管筋腫症などの特別な病気が気胸の原因となる場合があります。男性よりもより慎重な診断と治療戦略が必要な状況があります。
気胸の基礎知識
気胸とはどんな病気でしょう?
気胸とは肺に穴が開いて、空気が胸腔内に漏れることによって肺が縮んでしまう病気です。多くはブラと呼ばれる風船のような脆弱な組織が破綻することによって発症します。
気胸の症状は?
気胸の症状は若年者では胸や肩のあたり、背部の鈍痛が一般的です。その後、肺の虚脱が大きくなると呼吸が苦しくなるような自覚があります。患者様によっては"呼吸でポコポコ音がする"という自覚症状を言われる方もいます。呼吸状態が全く悪くならない軽度の気胸もありますが、中高年の気胸の場合、激しい呼吸苦と酸素低下が起こり重篤な状態となることもあります。また、若年者でも緊張性気胸に移行すると心停止の可能性が出てきます。
治療方法は?
- 内科的治療(胸腔ドレーン挿入)
胸腔ドレーンを患側に挿入して、肺虚脱を回復させる治療です。
手術治療(胸腔鏡下ブラ切除術)
肺瘻の原因であるブラを手術で切除する治療です。胸腔鏡を使用した低侵襲の手術となっています。
経気管支鏡的気管支塞栓術
肺瘻部位の肺に通ずる細気管支を気管支鏡を用いて選択的に人工物で閉塞させる治療です。全身状態不良の患者様に対する治療になります。