心臓血管外科

診療内容

心臓血管外科では虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞など)、心臓弁膜症などの後天性心疾患、不整脈疾患、大動脈解離、胸部あるいは腹部大動脈瘤を中心とする大動脈疾患、末梢動脈疾患(末梢動脈瘤、下肢閉塞性動脈硬化症など)、静脈疾患(下肢静脈瘤など)、透析用ブラッドアクセス作製などを対象とした外科治療を行っています。また、疾患の特異性から一刻を争う緊急性の高い患者さまの治療も担っており、当院が地域救急医療に貢献する使命を果たすという方針を掲げていることもあって、少数精鋭のスタッフが文字通り粉骨砕身診療にあたっています。高度な心臓血管外科治療の供給が私たちの目標かつ義務と考えております。

当科の特長

"患者さまが笑顔になる"治療をチームワークで実践します

我々は医療の本質とは、疾病を治すことだけではなく、病気に苦しむ人に、現状での最大の満足を届けることにあると確信しています。医療の現場では強い責任感と使命感、生命への献身が求められますので、患者さまが安心して質の高い手術治療を受けられるよう、執刀医、麻酔科医、看護師など各々の高い専門性を持った医療チームが献身的な努力を行っています。 cardiovascular_img01.jpg

患者さまの不安を取り除きます。病気と向き合うすべての人たちに「笑顔」を

医療者としてだけではなく、人として患者さまやご家族の方と向き合い、患者さまが安心して治療が受けられ快適に過ごしていただけるようスタッフ一同接遇に取り組み続けています。人と向き合い、命と向き合う。

そのためには、日本でいま受けられる中でベストと思われる治療を提供すること、そして自分の家族を思うように、患者さまのことを思い、治療にあたることだと信じております。

チームワークと医療サービスの向上

医療の高度化・複雑化・業務の増大などに伴い、当科では専門職からなる集団が連携を保ちながらスタッフ一人一人が自分の仕事に責任を持ち、専門性を高め医療サービスの向上に努めています。

また、新しい治療の拡大、医療技術の高度化に対応し、それぞれの医療スタッフがさらに医療の質を上げなければなりません。

そのため、高い専門性を持ったスタッフによる情報交換はかかせません。市内の紹介先病院との連携を深め、各種情報交換を行える環境を整えております。

質の高い医療を実現するための情報交換がより良い医療サービスの向上へと結びつくのです。

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質の高い専門性

札幌中央病院心臓血管外科は、常にこのことを考え実践している選りすぐりの専門職の集まりです。現在、当科では心臓弁膜症、冠動脈疾患などの後天性心疾患、大血管・末梢血管・静脈疾患などに対して、医学に関する学会の認定資格を有する専門医が、極めて質の高い、患者さま本位の充実した専門医療を行っています(詳細は担当医紹介および施設認定をご参照ください)。ご自分の病状にご心配のある方、今後の治療に不安を頂かれている方、治療方法の選択を迫られている方、突然の病にみまわれ途方に暮れている方、皆さんが今直面されている危機を克服するために、我々のチームがお役に立てると思います。きっと最善の治療方法が見つかると思います。

こんな症状・疾患をみています

心臓疾患

(1)虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)

心臓は冠動脈と呼ばれる血管から心臓を形づくる筋肉(心筋)に血液が供給されることで、心臓が拍動して血液を全身に送り出すことが出来ます。冠動脈は動脈硬化によって狭窄や閉塞を生じることがあり、それによって心臓にいろいろな不具合を生じます。冠動脈が狭くなり必要なだけの血液が供給できないことで胸部の圧迫感や痛みが起きてくる状態を狭心症、冠動脈が完全に閉塞して血液が途絶、心筋が壊死(血液がないことにより破壊される状態)に陥ったものを心筋梗塞といいます。 cardiovascular_img03.jpg
狭心症
症状

坂道、階段の昇降など、体に負担をかける(労作)によっておきる胸苦しさや圧迫感、締め付けられるような感じが典型的な症状です。しかし、食後の満腹時、喫煙時、急な温度の変化などで発作が起きることもあります。また、胸の症状ではなく、肩こりやお腹の不快感として自覚する場合もあります。発作が頻回になったり、安静時にも起きるようになると「不安定狭心症」という危険な兆候です。

治療

カテーテル治療(経皮的冠動脈形成術)

狭心症に対してはカテーテルによる治療=経皮的冠動脈形成術(PCI)が可能かどうかを検討します。この治療は大きな手術を必要としない身体への負担の少ない治療法として広く用いられています。

冠動脈バイパス術(CABG)

カテーテル治療が適さない場合には、冠動脈バイパス術で治療を行います。以前のCABGは全て体外循環という装置を用いて、心臓を停止して行っていましたが、最近ではそのような装置を用いず、心臓を拍動させたままでCABGを行う技術が進歩してきました。これをoff pomp CABG(OPCAB)といいます。

当院では冠動脈バイパス術の95%以上をOPCABで施行しております。それにより様々な合併症の回避や輸血率の減少に寄与していると考えられます。

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冠動脈バイパス術(CABG)

心筋梗塞

心筋梗塞に陥った場合は専門施設で循環器医の治療を受けます。冠動脈が完全に閉塞してしまうと心臓の筋肉は壊死(腐って)してしまいます。狭心症の発作とは異なり、安静や薬物でも症状は改善しません。治療はできるだけ早く詰まっている冠動脈に血流を再開することです。

そのためカテーテルによる治療が最優先となります。

しかし、残念ながら心筋梗塞が確定してしまうと、心筋梗塞後の合併症(左室破裂や心室中隔穿孔など)が生じることがあり、その場合には外科治療が必要となります。

(2)弁膜症(べんまくしょう)

心臓には、血液が逆戻りせずスムーズに還流するように4箇所に弁があります。

これら心臓弁は正常では非常にしなやかなヒラヒラとした膜様の組織ですが、これが硬くなって開きにくくなって血液の通り道が狭くなった状態を「狭窄」、しっかりと閉じるべきときに閉じが悪くなって逆流してしまった状態を「閉鎖不全」と言います。

症状

始めは症状を伴わず進行します。進行すると、狭心症のように胸が痛くなったり、呼吸困難、むくみ、失神などを呈するようになります。

普段の生活でつかれやすい、息切れがする、横になると呼吸が苦しくなるなどは弁膜症が原因である可能性がありますので、そのような症状がある方はお気軽に当院にご相談ください。

治療

まずは内服薬服用による治療を行いますが、症状と重症度によっては外科治療を行います。

心臓弁膜症に対しても従来は人工弁を使用した人工弁置換術が主流でしたが、それに加えて、自己弁を温存した弁形成術を積極的に行い良好な成績を得ております。また、低侵襲治療として、カテーテルによる弁置換術や弁形成術も行えるように札幌医科大学と密に連携しております。

それぞれの患者さまの生活背景などを考慮し、患者さまにより良い治療を提供し、満足していただける様に治療方針を決定しております。

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(3)不整脈

心臓は洞房結節という部分から規則的に電気刺激が発生することによって規則正しく拍動しております。その規則正しい電気刺激が障害されることにより不整脈が発生いたします。

症状

動悸や脈がとぶというような症状が一般的ですが、失神や脳梗塞、突然死に至ることもあります。

治療

脈拍が遅い患者さまに対するペースメーカー植え込み、重症心室性不整脈に対して特殊なペースメーカ(ICD)を植え込むことで、突然死を防ぐなどを行っています。その他にも心不全を改善するために両室ペーシング(CRT)を植え込むことも可能です。また、Maze手術やカテーテルアブレーションといった不整脈を治す治療も行っております。

血管疾患

(1)大動脈瘤

大動脈が部分的に大きくなったものを大動脈瘤といいます。動脈硬化が原因であることが多く、大きくなりすぎると最終的には破裂する危険性があります。破裂した場合には救命は困難です。

症状

症状は特になく、他疾患の検査中に偶然発見されることが多いです。

治療

大動脈瘤の根本的な治療法としては、開胸あるいは開腹して瘤を切除し、人工血管に置換する方法(人工血管置換術)があります。もしくは動脈瘤の発生部位によっては、身体に負担の少ない治療として血管内治療(ステントグラフト内挿術)があります。大動脈瘤には胸部大動脈瘤、胸腹部大動脈瘤、腹部大動脈瘤が存在しますが、当院ではそれらのすべての手術が可能です。全ての手術療法にいえることですが合併症がない手術はありえず、どちらの方法にも出血や瘤への血流残存(エンドリーク)、血栓症、感染症などが起こりえます。患者さまお一人お一人の血管の状態や合併症など様々な要素を考慮しながら、最善と思われる治療法を提供することを心がけています。

人工血管置換術

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ステントグラフト内挿術(カテーテル治療)

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術前

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術後

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術前

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術後

(2)急性大動脈解離

急性大動脈解離は血管内膜に亀裂が生じ、そこから血液が流入することで、大動脈が真腔(もとの血管腔)と偽腔(新たに血管が裂けてできた腔)に裂ける病気です。高血圧や動脈硬化などが原因のほか、生まれつき血管の壁が弱い方に発症する場合があります。突然発症し、適切な治療が行われなければ死にいたる非常に重篤な病気です。

症状

発症時、血管が裂けるときに激烈な痛みを伴います。それは突然出現し、血管が裂ける範囲によって、胸痛、背部痛、腹痛、腰痛という形で現れます。血管が破裂すると、出血性ショックを起こしたり、心タンポナーデ(心臓の周りに液体、この場合血液がたまり心臓が動けなくなってしまう状態)を起こし血圧が低下し死に至ります。他に十分な血液が流れなくなった臓器の虚血症状(意識消失や腸管壊死など)も現れます。

治療

大動脈解離を起こした部位によって治療法は異なりますが、発症後48時間以内の死亡率が非常に高いため、発症後なるべく早く診断し、治療を開始することが重要です。治療法としては緊急手術になることもありますし、保存的療法になることもあります。

(3)末梢動脈疾患

閉塞性動脈硬化症:下肢の動脈が狭窄、閉塞することで、様々な症状が出現します。

症状

下記の項目に思い当たるものが一つでもあったら閉塞性動脈硬化症を疑いますので当院を受診してください。

  • 最近、歩くのがおっくうになった、つらい。
  • 休まずに歩ける距離が短くなった。
  • 歩くと足の筋肉が痛くなる。特に坂道や階段を登る時に痛む。
  • 足がいつも冷たく感じる。
  • 左右の足の色が違う。

放置すると下肢を切断しなければならない場合もあります。

治療

薬物治療、カテーテルによる血管形成術、バイパス手術を組み合わせることで治療します。糖尿病、高血圧、透析など、全身の病気に伴う場合もあり、これらでは下肢切断に至る可能性が高くなります。当院では積極的に下肢を守る治療(救肢治療)を行っています。

(4)下肢静脈瘤

下肢の静脈がぼこぼこと拡張してしまう疾患です。美容的に気になる患者さまが多いです。

症状

典型的な症状は特にありません。足がだるい、足がつるという症状が出現する方もいます。

治療

手術療法が基本です。傷が目立たないように小さな創部で行うことが出来ます。また、カテーテルによる高周波焼灼術も行っております。

軽症の場合には弾性ストッキング着用などの方法を選択する場合もあります。

(5)透析患者さまのブラッドアクセス治療

透析患者さまは日常の維持透析を行うにあたってブラッドアクセスという動脈と静脈のシャントが必要不可欠です。そのブラッドアクセスの新規作製、修復などを行います。当院では札幌市内および市外の病院と連携し、緊急の対応も行っております。

主には上記に記載の疾患について診療しておりますが、この他にも幅広く診療しております。何か体の不調があった場合にはお気軽に当院までご相談ください。我々が何かお役に立てることがあるかもしれません。可能な限り患者さまの要望にお応えできるようにお話しさせていただければと思っております。

施設認定

  • 三学会構成心臓血管外科専門医認定機構基幹施設(日本胸部外科、日本心臓血管外科学会、日本血管外科学会)
  • 日本外科学会外科専門医制度修練施設
  • 浅大腿動脈ステントグラフト実施施設
  • 胸部大動脈瘤ステントグラフト実施基準による血管内治療実施施設
  • 腹部大動脈瘤ステントグラフト実施基準による血管内治療実施施設
  • 下肢静脈瘤に対する血管内治療実施基準による実施施設
  • 日本循環器学会認定循環器専門医研修施設
  • 日本心血管インターベンション治療学会研修施設群連携施設

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