消化器外科

診療内容

近年、外科手術療法においては、できるだけ機能を温存し体に負担の少ない治療法、腹腔鏡手術が普及しています。以下に腹腔鏡手術をはじめとした当科で施行している診療内容のご紹介を致します。

当科の特長

胃がん・大腸がんに対する腹腔鏡手術

当院では、消化器(胃、大腸、直腸、肝臓、胆道系)の悪性疾患や良性疾患に対する手術治療を行っています。胃がん、大腸がんには積極的に腹腔鏡手術を施行しています。腹腔鏡手術とは、腹部に1cm程度の穴を数個程度あけ、その穴を通してカメラや鉗子や電気メス、超音波凝固切開装置をお腹の中に挿入し病巣部を切除する手術です。

この手術は従来の開腹手術と比較して、より少さな傷で済み、カメラ映像を大画面で拡大視することにより、細かな血管も判別しやすく出血を少なくできるなど、より安全に手術を行うことが可能となります。悪性疾患においての術後再発率や生存率に関し、開腹手術と遜色なしとの報告もあります。このような理由から一般に腹腔鏡手術は、手術治療に伴う体の負担を大きく軽減し、術後の早期社会復帰に寄与すると考えられており、患者様のメリットは非常に大きいと言えます。当科では積極的に腹腔鏡手術を取り入れ、常に必要かつ十分な根治的手術治療を目指しながら、一方では手術後に心配される合併症の発生率を少なくするなど、安全性に配慮した診療を行っています。

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たとえば、大腸切除手術後の縫合不全(吻合した腸管から便が漏れること)には特に注意を払っています。縫合不全の大きな原因の一つに腸管血流低下が指摘されていることから、当科では腸管吻合前には、高度な画像解析技術を用いた腸管の血流評価を行った後に、腸管吻合を行っています。術後の縫合不全をはじめとした合併症の発生率をできる限り低く抑えるために、今後も様々な努力を積み重ねていきたいと考えています。

各種ヘルニア、胆のう結石症、緊急手術が必要な急性虫垂炎はじめ各種消化器疾患、腸閉塞などの良性疾患も、可及的に腹腔鏡で手術を行います。小さな傷で術後の痛みも少なく、短期間入院での治癒を目指しています。

短期間入院がメリットとなる腹腔鏡手術ですが、術後はリハビリテーションをしっかり行って退院を目指したいとお考えの、特にご高齢の患者様・ご家族様には、そのご要望にもできる限り対応すべく、医療スタッフ全員でサポート体制を整え、日々診療に当たっています。

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悪性腫瘍に対する化学療法

当科では、消化器悪性疾患に対する化学療法も行っています。現在の化学療法における薬剤の種類は多岐にわたりますが、遺伝子検査を踏まえた科学的根拠のある薬剤選択が必須です。術前や術後の補助療法、再発に対する化学療法では、各疾患の診療ガイドラインに則り、患者様の病状やご希望に合わせて治療法の選択を行い、治療を実施します。治療中は、つらい副作用の症状についての訴えをしっかりと傾聴し、適切な対策を迅速に取れるように留意しながら診療を行っています。

ストーマ外来

当院では、消化器外科医師と皮膚・排泄ケア認定看護師とで週1回、月曜日の午後にストーマ外来を行っています。ストーマ外来では、当院や他院で人工肛門を造設された患者様を対象に、退院後の日常生活を快適に過ごせるようサポートしています。

皮膚トラブルがある・便が頻回に漏れてしまうなど、様々な悩みを持たれる方に対しては、トラブルの対処方法や皮膚トラブル改善につながるケアを提供します。

他にも日頃のちょっとした心配、たとえばストーマがあるけど旅行に行ってもいいのか、温泉には入れるのか、などの小さな疑問にもゆっくり時間をとって相談をお受けしています。人工肛門に関してのセカンドオピニオンにも対応していますので、お気軽にご相談いただければと思います。

最後に当科では、医師・看護師だけでなく、栄養士、薬剤師、理学療法士などがチーム一丸となり、患者様・ご家族様が消化器外科治療に際して不安を抱くことなく必要な診療が受けられるよう、しっかりサポートできる体制作りを行っており、今後もさらに患者様のために尽力したいと考えています。

こんな症状・疾患をみています

胃がん

昔は、D2と呼ばれる標準手術がほとんどの胃がんの患者に行われていました。しかし、近年胃がんに対する理解がすすみ、「胃がん治療のガイドライン」と呼ばれるものができてきました。これによって、がんの進行度に合わせて、医者や施設に左右されずに、どこでもほぼ同じ治療が受けられるようになってきています。当院でも、この「ガイドライン」に沿って、患者の状態や進行度に合わせた手術や治療を行っています。

結腸がん、直腸がん

いわゆる大腸に出来るがんのことです。最近は、食生活の欧米化により増加してきています。以前はS状結腸と呼ばれる部位にがんが出来やすいと云われていましたが、最近の診断技術の向上により、大腸全体に同じようにできると考えられてきています。最近の手術で大きく変化しているのは、直腸がんに対する手術でしょう。昔は直腸がんの手術といえば人工肛門になることが多く有りましたが、現在では手術器械の発達により肛門を残せる手術が非常に多くなってきています。当院でも可能な限り肛門機能を残すように手術を行っています。

肝がん、胆のう・胆管がん、膵臓がん

これらの病気は、診断ならびに治療に高度な技術を要するため、当科では日本肝胆膵外科学会高度技能専門医修練施設である北海道大学消化器外科Ⅱ(旧第二外科)と診療連携して診断・治療を行います。

ヘルニア

下腹や足の付け根、昔手術したお腹の傷が腫れてくるなど、いわゆる脱腸と呼ばれていた病気で、放置するとだんだん大きくなってきます。ソケイヘルニアや大腿ヘルニアなどいろいろな種類があります。従来法では術後の強い痛みを伴いましたが、当科では可能な限り人工膜を用いた腹腔鏡手術を行い、術後の負担はかなり軽減され、入院期間も短く、術後再発率も低くなっています。

胆石症

食後の強い腹痛など、胆石による症状がある場合、胆石症といって手術対象となります。腹腔鏡手術が標準治療で、当科では最新器械も導入しながら手術を行っています。

腹膜炎

お腹の一部や全体が痛くなり高熱が出る病気で、急性虫垂炎(いわゆる盲腸)など、いろいろな原因があります。胃潰瘍・十二指腸潰瘍穿孔は、早期であれば点滴治療でほとんどが治癒しますが、重症化した場合や、大腸の穿孔は放置すると生命にかかわるため、緊急手術の対象になります。当科ではあらゆる消化器疾患の診断・緊急治療に対応し、必要時には緊急手術、病状によって迅速に高次医療機関への転送も検討します。

腸閉塞(イレウス)

急にお腹が痛くなり吐いたりします。この病気もいろいろな原因で起こります。点滴やイレウスチューブと呼ばれる内科治療で改善することもありますが、緊急ないし待機的に手術が必要となることも多い疾患です。がんなどの悪性疾患が原因となっている場合もあるため、詳しい原因検索のための検査と、原因疾患に対する根本治療が必要となります。

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